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人類に水の危機が迫っているという。水の惑星と言われる地球。水なしには存在そのものが考えられないあらゆる生き物たち、その生き物たちの一員であるヒトという生き物われわれ。危機はどんな形で迫ってきているのだろうか。
水は空から降ってくるが、短時間に沢山降れば洪水、土石流となり、長時間に少ししか降らなければ旱になる。水を利用する側から言うとまず量を確保したい、次にいい水質の水が欲しい。詰まる所人と水の関係は、Ⅰ洪水・土石流、 Ⅱ旱など供給水量不足、Ⅲ人が利用する水の水質の3点に整理される。 短期に過剰な雨量で生ずる洪水・土石流の人為的要因 1.洪水・土石流 この夏も、日本では各地で洪水と土石流の被害があった。土石流の場合は山が崩れ、家を壊し、田畑を土砂で埋め、時に人を傷つけ殺す。その原因は短時間の大量の降雨であり、「地球温暖化の影響により降水量・降雨強度が増大した」との議論がある。地球温暖化は人類の化石エネルギー消費増大が主要因であるとする議論には検討の余地があり、のちに触れるが、個々の自然現象を世界規模の気候変動と直接結びつけて論ずることには慎重でなければならない。 実は、一見自然現象と見られる洪水や土石流などの発生要因の中に人為的要因が潜んでいることを以下にとりあげる。 1.1放置された植林地 日本で起きている山崩れの現場をテレビや新聞写真で見てみると、私が見る限りそのすべてが杉か檜の植林された針葉樹林である。(写真下・南大隅町土石流 ) 戦後の植林ブームの中、各地で杉や檜が植えられ、またその後の農林業の衰退による挙家離村で、田畑から軒先まで杉檜を植えて先祖伝来の土地を離れる農家も続出した。1961年以降の木材輸入の自由化で輸入木材には税金をかけず、国内林業家の税金は下げないという政策から、林業は引き合わないものとなり、山林は放置されてきた。植林された針葉樹林は、植え付後20年ほどの間、下草刈りと間伐が行われて初めて材質のいい木が得られる。そればかりでなく、山の斜面も適切な生態系が保たれ、降った雨はそのまま下流に直行はしない。雨は木の葉で止められ、下草で止められ、落ち葉のすきまで止められ、その下の落ち葉が土になりかかっている腐葉土で止められ、さらに小枝や落ち葉が流路に作るミニダムで止められる。間伐がされない針葉樹の植林地は太陽光線が届かないため下草もまったく育たず土はむき出しである。このような斜面に降った雨水はさえぎるものもなく一直線に最短距離を流れ下る。当然勢いも強く土を削る量も多い。根も洗われてしまう。(写真左・手入れされた杉林、右・ 間伐されていない杉林 筆者提供) 1.2 山を削って新築された屋敷 ある日のテレビでは、立派なお屋敷が山の上から落ちてきた大石で見るも無残に押しつぶされていた。家は立派だが山肌を削ったところに無理があった。老人ホームなどの施設も、建物は立派だが斜面を削って作ったところに立てられる例が少なくない。コンクリートの擁壁を作っても、自然の力がそれに勝ってしまうのである。 1.3 銘木掘り出しにより山が荒れる 1997年鹿児島県出水市の針原川の土石流は、上流の山林で楠などの銘木が掘り出され、その後始末の埋め戻しもないまま放置されたので、荒らされた斜面からおそらくは透水性の高い地層に豪雨が流れ込み深層崩壊を引き起こしたものと考えられる。 1.4 ゴルフ場は水を止められない ゴルフ場は、一見見た目に緑できれいだが、水を止めて置く力は非常に弱い。原生林のように森が深く、樹木が背の高いのから低いのまで幾層にも重なっていれば、雨水が川に流 れ出すまでには三重・五重の障壁を作り川の水位の上昇を和らげる。 1.5皆伐とスーパー林道による山肌荒らし 戦後のパルプ産業の隆盛によって、林業は択伐方式から皆伐方式に変わった。択伐であれば若い木は残され山肌を守るが、皆伐になると山肌は丸裸になる。雪の降る地帯では春先、凍った雪が板状になって山肌を滑り落ちようとするが、大小の切り株が斜面にしがみつき氷の板がそのまま滑り落ちるのを防ぐので、溶けた水だけが流れ落ちる。しかし、数年もたてば根も腐り切り株は持ちこたえられず、氷の板に抱えられて、根の周りの土を道連れに流れ落ちる。それまで培われていた生物相豊かな表土もろともに。 雪の少ない地方でも、むき出しの地表は雨に壊されやすく、また、木材伐り出しのためのスーパー林道も山肌を大きく削り取るために、土砂流出の要因となる。 このように見て来ると自然現象と見られる山崩れ・土石流の要因として人為的なものが潜んでいることが明らかである。外国の事例では、パキスタンの洪水は上流のインドのダムを守るための放流が一因といわれ、中国甘粛省の土石流も開発と森林の減少が原因として指摘されている。人為的要因を見逃さないようにしなければならない。(つづく・連載4回) 〔筆者プロフィール〕 1933年生まれ。東京大学農学部農学科卒、1957~1993農林水産省試験研究機関勤務、1993~1998全農営農・技術センター勤務、1999技術士事務所井上農研開業、2000~2003有機農業認定機関「有機農業推進協会」副理事長、2005~2007同「民間稲作研究所認証センター」代表、現在同センター理事、2008~現在ひらつか自治体財政研究会会長。六文会事務局長。
by abkd_asia
| 2010-10-16 22:07
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